2018-05-03から1日間の記事一覧

3-1 祭り囃子鳴り止まず

第三章 終末の日のすごしかた 陽は既に落ちて。祭りの夜は幕を開ける。家々から立ち上る夕食の香りも、今日ばかりは出店の喧騒に取って代わられている。 正晴は静とともに海へと向かう道程を歩いていた。手が触れ合う距離、けれど触れることはなく、いつもの…

2-3 特訓

一流のレーサーは一流の工房を持つ。蛍が一文字家に来てから、豪樹の部屋は魔改造の果てにプロ顔負けの作業場と化していた。 「豪樹、ミニ四駆の調子はどうだ」「ほたるこそ、軽量化は進められたか!? 機関銃とか載せると重くなるからやめろよ!」「任せろ…

2-2 砂状の楼閣

「ねっ、海いきましょ。海。どうせ暇なんでしょ?」「わかったよ、海ね、海。好きだよな、静も……なんで海にこだわるんだ?」「2050年の世界ではずっと地下に暮らしていたの。ここに来た時ホントに感動したわ。山も空も、とっても綺麗。その中でも海は一番綺…

2-1 ミッドサマー・フライティング

第二章 ただ一度の夏 夏休み。学生たちは各々の部活動に気炎を上げる中。結女を後ろに載せて、光里の漕ぐ二人乗りの自転車は法定速度を大きく超過しながら流星のように出前を配ってゆく。 「ま、待ってー! お寿司が! お寿司がぁー!!」 聞けば、結女は部…